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2006年3-4月のニュース

T○気象、気候および大気観測衛星打上(2006年4月28日、アメリカNASA/JPL)
NASAはカリフォルニアVandenberg空軍基地より4月28日にCloudSat及びCalipso衛星を搭載したロケットの打上に成功し、地上管制所は両衛星共に正常動作していることを確認した。NASAは今後6週間にわたり機器類のチェックを行った後、両衛星を最終的な高度約705kmの太陽同期極軌道に移動させる予定である。CloudSat及びCalipso衛星はどのように雲や浮遊粒子が形成、発達し、相互に影響しあうかを研究するために用いられる。コロラド州立大学のStephens教授によれば雲は地球の気候システム及び水循環に重要な影響を与えるが、詳細はよくわかっていないとのことである。これらの両衛星は共にエネルギーパルスを発射し、雲中より散乱されて衛星に帰ってきたパルスを計測する。CloudSat搭載のCloud-Profilingレーダーは典型的な気象レーダーより1000倍以上高感度であり、雲を検知し雲中の雲粒と雨粒を区別でき、Calipso搭載の偏波ライダー(Lidar編注:ライダーはレーダーに似ているが、電波ではなくレーザー光線を使用する。電波に比べてレーザー光線は波長が短く、また位相がそろっているので、より細かい対象物をより精密に観測するのに適している)は浮遊粒子を検出でき、浮遊粒子と雲粒を区別できる。なお、この両衛星はNASAやフランスの他の人工衛星と共に”A列車”を構成し、各人工衛星からのデータを組み合わせてより有意義に使用できるようにする予定である。
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R○白化を克服する珊瑚(2006年4月27日、アメリカScientific American誌)
珊瑚(のポリプ)は通常は藻類と共生し、それによって珊瑚の美しい色及び食物を得ているが、海水の温度が高くなりすぎると藻類を追い出してしまい、そして、貯蔵していた食物エネルギーが尽きると珊瑚は死滅してしまう。1998年だけでも、世界全体で16%の珊瑚がエルニーニョのために死滅し、国連は2030年迄に60%の珊瑚が消滅すると予測している。しかし、オハイオ州立大学のGrottoli氏、Villanova大学のRodrigues氏及びブラウン大学のPalardy氏は2種類の珊瑚を実験室で一度高温下にしばらく置いた後、自然に戻すといった実験によりMontipora capitataという種類の珊瑚の回復が早いことを見出し、さらに、この素早い回復は、この珊瑚が藻類から食物を得ているのではなく、プランクトンを大量に捕食するようになったためであることを発見した。Palardy氏によれば、このような珊瑚は生態的に有利であり、珊瑚礁を絶滅から救ってくれるかもしれないとの事である。
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T○アメリカEPAとアリゾナ州立大学共同でヒートアイランド対策の研究(2006年4月24日、アメリカEPA)
アリゾナ州立大学は、アメリカのEPA(環境保護省;Environmental Protection Agency)の予算補助により、都市部でのヒートアイランド対策として新世代の持続可能(sustainable)な材料及び再生可能な技術を開発するためにNational Center of Excellence on SMART Innovations for Urban Climate and Energyを開設した。この新施設では、都市部でのヒートアイランド効果の緩和およびエネルギー消費の減少を目的として、科学的に合理的であると同時に経済面や実際の運用面においても妥当な対策法を見出すために研究者、政府及び産業界の代表者達が協力しあう。
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D○Seaeye社1000m級のROVを発表(2006年4月20日、アメリカMarine Technology Reporter誌)
Seaeye社は深海、沿岸、外洋、トンネル内といったような場所で使用可能な、小型で運搬容易ではあるが、パワフルな1000m級のROV、Falcon DRを発表した。このROV(Remotely Operated Vehicle)は大容量のデータ通信や、高品質なビデオ送信が可能な光ファイバーケーブルを装備している。5基の独立したスラスターは個々に速度のフィードバックが装備されていて、正確かつ素早いコントロールが指先で可能なようにデザインされている。船上ユニットは、以前のユニットに比べ約半分の大きさであり、軽量化も図られている。このユニットは17インチの折りたたみ式のディスプレイ及びキーボードを備えていて、単位相のAC100~270V/2.8Kwで運用できる。このROVは他のFalcon級と同じくポリプロピレンのフレームを備えていて、カメラ、ソナーやマニュピレータといった装備を容易に装着可能である。
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R○近隣への鮭養殖場の害(2006年4月19日、アメリカACS/Environmental Science and Technology誌)
鮭を囲いの中で養殖すると、餌の残りや糞が海底に蓄積し、この栄養豊富な有機物に無脊椎動物が群がり、それにカサゴといった岩魚類が群がることになる。このような栄養豊富な有機物によって低酸素環境が生成されるが、これは水銀がメチル水銀になる絶好の環境であり、メチル水銀は最初は無脊椎動物に摂取され、それらの無脊椎動物を摂食する魚類中に濃縮される。養殖場はこういった栄養豊富な有機物が逸散するように、養殖した鮭を捕獲後6ヶ月は養殖を休める。しかしそれでも養殖場の下流にあたる場所で捕獲された岩魚類に、養殖場のない場所の岩魚に比べ最大で2倍の水銀が含まれていることをカナダの科学者は発見した。Fisheries and Oceans CanadaのTrudel氏によれば、この結果は一般にはそれ程深刻な問題ではないが、養殖場近くで捕れた自然の魚を多く摂食する人々の場合は注意が必要で、特に妊婦や子供は養殖場の近くで捕れた岩魚類の摂食は減らした方がよいとのことである。
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T○大西洋に津波監視ブイを設置(2006年4月17日、アメリカNOAA)
NOAA(アメリカ商務省、大気海洋局)はアメリカの津波警報システムの拡張として、アメリカ東海岸沖、メキシコ湾及びカリブ海に5基のDARTIIブイ(Deep-ocean Assessment and Reporting of Tsunami)(編注:tsunamiは津波のこと。tidal waveと表現されることもあるが、それは誤り)システムの設置を完了した。DARTIIブイシステムはリアルタイムで津波を検知し、人工衛星を介した双方向通信(編注:人工衛星を使用した海洋観測データ通信システムは費用及び使用できる衛星の制限により、単方向通信が一般的。日本近海では携帯電話を使用した通信が安価な代替方として採用され始めている。)で重要なデータを予報者が受け取れるようになっている。NOAAは津波警報システム拡張のために2005年度に1720万ドル、2006年度に967万ドルの予算を得、2008年迄には太平洋に32基、大西洋に7基、計39基のDARTIIブイシステムを設置する予定である。この予算により、NOAAの津波警報センターはアメリカ東海岸全域、メキシコ湾、プエルトリコ、アメリカ領ヴァージン諸島及びカナダ東部へのサービスを開始し、これらの地域では津波警報をラジオや緊急警報システム等で受信できる。NOAAのLutenbacher氏によれば、DARTネットワークは津波の危険を検知し、公衆に警告するための総合システムの一部であり、NOAAは東海岸の住民や訪問者が津波警報を受け取れるように通信ネットワークの強化、検潮所ネットワークのアップグレード、津波警報センターの24時間体制化、危険地域に対する予測モデルの作成、研究から現業への技術移転および一般への啓蒙への重要な一歩を進めたとのことである。2006年1月にはヴァージニア州ノーフォークがアメリカ東海岸の主要都市では最初のTsunamiReady(編注:津波準備完了。詳細は-->ここをクリック<--)になった。なお、TsunamiReadyとは、NOAAが地元と共同して、避難プランの準備、通信の強化、住民及び訪問者への津波に対する注意を喚起するプログラムである。
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DARTIIブイシステムは海底に設置された圧力センサー(編注:海面の波は海底では圧力の変化で検知できる)を含む中層係留系(編注:係留系とは、下部は通常海底にアンカー等で固定され、上部には浮きが装備され海底より垂直に立ち上がるようにしたロープ等のもの。海洋観測の場合は測定器をこのロープに装着し、海中の特定の深さでのいろいろな値を測定する。中層係留系の場合は最上部が海中にあり、海面での風や波等によるブイ自体の動揺の影響を受けない。)及び陸上と人工衛星を介して双方向通信を行う表面ブイ係留系で構成され、両者間の通信は音波で行う。このシステムのデータ通報モードは2つあり、内部のソフトウェアが(津波等の)イベントを検知すると、データの平均間隔や通報間隔を自動的に短くする。
-->DARTIIブイシステムに関する記事を読む<--

R○無人飛行機による大気汚染の観測(2006年4月17日、アメリカSIO/UCSD)
カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所のRamanathan氏が率いるグループは、3月6日より31日にかけて、モルディブ付近のインド洋上で自律航行式無人飛行機(AUAV)による18回のデータ収集飛行を行う事に成功した。インド洋上空は南アジアの工業地帯、都市部や農業地帯からの塵や浮遊粒子により、褐色の雲や霞がしばしば生じる。研究者は近年、観測された地球温暖化の傾向が、大気汚染およびそれによる暗化や冷却によって過小評価されている可能性があることに気がついた。したがって、大気中の塵や浮遊粒子が地球の反射率(アルベド)をどのように変えるかを知ることは、人為的な気候変動の研究に重要である。今回実施された観測では3機のAUAVを同期させて雲上、雲中、雲下の3高度で同時に飛行させ、これらの高度での同時観測を行った。これにより、汚染粒子がどのように空を暗くし、また、雲の生成(この雲によってさらに空が暗くなる)にどのように寄与するかを調べた。この研究で使用されたAUAVはAdvanced Ceramics Research社製のManta(編注:元記事に写真有り)で太陽放射、雲粒のサイズおよび濃度、浮遊粒子のサイズおよび濃度、乱流、湿度及び温度を計測する5kg以下の機器類を搭載していた。なお、有人の複数航空機による同時観測は希に行われたこともあるが、費用や難易度のため観測を繰り返し行うことができない。
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T○アメリカでの温室効果ガス排出に関する報告書公表(2006年4月17日、アメリカEPA)
アメリカのEPA(環境保護省;Environmental Protection Agency)は温室効果ガス排出に関して、国連の気候変動に関する基本枠会議(UN Framework Convention on Climate Change)の事務局に提出する報告書"Inventory of U.S. Greenhouse Gas Emissions and Sinks: 1990-2004."を公表した。この報告書によれば、メタンおよび亜酸化窒素の排出は1990年のレベルよりそれぞれ10%および2%減少した。また、温室効果ガス全体では2004年の排出は前年に比べ1.7%増加した。この増加は、主に燃料及び電力消費に伴う2酸化炭素の排出の増加により、化石燃料(編注:石油、石炭、天然ガス等)の燃焼によるものが全体の80%に相当した。なお、アメリカの経済は1990から2004にかけて51%拡大したが、排出は15.8%しか増加していないとのことである。なお、この報告書は毎年作成される。
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T○アメリカー台湾共同気象・気候観測衛星群打上(2006年4月14,13日、アメリカNASA/JPL)
記事1

4月14日にカリフォルニアVandenberg空軍基地よりアメリカー台湾共同の気象・気候観測衛星群の打上に成功した。
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記事2
アメリカー台湾共同の気象・気候観測衛星群、米国名Cosmic(Constellation Observing System for Meteorogy, Ionosphere and Climate)、台湾名Formosat-3は6個の低高度(800km)軌道の人工衛星より構成され、1日あたり地球全体でほぼ一様に分布した約2500点での観測を行う。これは5ヶ年計画で、衛星アレイシステムの設計及びミッションの管理は米国UCARが行う。 これらの衛星はGPSからの電波が大気を通過する際に生じる屈折を計測するが、この手法による大気の観測は、JPLのMannucci氏によれば1960年代にJPLによって惑星大気の研究のために開発され、(編注:原理については->ここ<-をクリック)1990年代に地球の軌道上で使用できるようにされたとのことである。Cosmicによって得られた温度と水蒸気の分布はハリケーン、台風や他の嵐の海洋上での観測、研究や予測に役立ち、また、日常の天気予報のいろいろな部分での精度向上にも役に立つ。また、ミッションの安定性、一貫性および精度は長期気候変動のトレンドを定量化するのにも役に立つ。それ以外にも、Cosmicは地磁気嵐の解析および予報にも役に立つと期待されている。以前にも単一の人工衛星でGPSからの電波観測を試験的に行った例はいくつかあるが、今回のCosmicのように高密度で地球全体を覆い、研究や天気予報に役立てることができるような観測は初めてである。
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T○セイウチの赤ちゃんが外洋に取り残される(2006年4月13日、アメリカWHOI)
ウッズホール海洋研究所のAshjian氏及び他の研究者達は、2004年の夏に北極海で航行中のアメリカ沿岸警備隊の砕氷艦より、9匹のセイウチの赤ちゃんが岸から遙かに離れた海域で単独で泳いでいるのを視認した。セイウチの赤ちゃんは単独では餌を捕ることが出来ず、2才になる迄は母親のミルクが必要で、単独で沖合にいるのはこれ迄に目撃されたことがない。通常アラスカの北の大陸棚上では海氷が形成され、この海氷は夏期にも存在する。セイウチの母親はこの海氷上で休んだり、子供を海氷上に残し最深200m迄の海底に潜り貝やカニといった餌を捕ったりする。しかし2004年には、このセイウチの赤ちゃんが目撃された大陸棚上の海域にはベーリング海からの暖かい海水が流入しており、そのため大陸棚上の海氷が急激に融けて結氷域が水深の深い外洋にまで後退した。結氷域がこのような深い海域にまで後退すると、セイウチの成獣は子供を海氷上に残して餌を捕ったり、海氷上で休むことができず、母親と子供が離別してしまう。極域での温度上昇に関連し、テネシー大学のCooper氏らの研究グループによれば、もしセイウチや他の海氷を必要とする海洋哺乳類が、海氷がない浅海で子供を育てることができるようにならなければ、これらの哺乳類の数の重大な減少がおきるかもしれないとのことである。
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T○NASAは2008年からの海面高度観測に参加(2006年4月11日、アメリカNASA/JPL)
NASAはNOAAおよびフランスのFrance's Centre National d'Etudes Spatiales及びEUのEuropean Organisation for the Exploitation of Meteorological Satellitesと共同して2008年に海面高度観測衛星Jason-2を打ち上げることに署名した。これにより、1992年にTopex/Poseidonによって開始され、現在はJasonに引き継がれた海面高度観測をさらに3〜5年延長することになる。この人工衛星のデータは季節から数十年といった時間スケールの海洋の循環(海流)の変動の研究や、海面水位の観測や外洋の潮汐モデルの精度向上、海洋気象や海象の予報、気候や海洋のモニタリングなどに利用される。
(以下、元の記事には各機関の分業内容が記述されているが、ここでは略)
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R○北太平洋における酸性化の化学的および生物的な影響(2006年4月5日、アメリカNOAA)
最近行われたタヒチからアラスカ迄の観測航海で得られたデータより、海洋がより酸性化していることが確かめられた。北東太平洋の広範囲な観測域において、表層水のPHが約0.025減少し、溶存無機炭素は約15マイクロmol/kg増加していた。NOAAのFeely氏によれば、この大きな変化は、石炭や石油といった化石燃料の燃焼に伴って人為的に放出された2酸化炭素の、主に過去15年間における海洋による吸収によるものと考えることが可能であるということである。NOAAのSabine氏によれば、海洋は、毎年人間の活動によって大気に加えられる2酸化炭素の約1/3を吸収し、次の千年間で大気に放出された2酸化炭素の約90%を吸収すると予想されるとのことである。一方カリフォルニア州立大学サンマルコス校のFabry氏によれば、海洋の酸性化により、カルシウムの外骨格を持つ翼足類(pteropod)のようなカルシウム分泌生物は減少し、これは海洋の食物連鎖網に影響を与え(編注:下でリンクが示されているラジオ番組で翼足類が高緯度域の魚類や鯨類にとって重要な食物であることが説明されている。)、他の温度、塩分や湧昇による栄養塩の気候変動と組み合わさって、海洋の生物多様性や生産性に非常に大きな影響を与える可能性があるとのことである。
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-->シアトルの新聞掲載の同様の記事(より一般的な解説)を読む<--

-->関連したトピックのラジオ番組を聞く(KUOW、含podcasting)<--

R○河川流量によって示された北米東部の早期融雪(2006年3月27日、アメリカUSGS)
USGSの科学者は北米の河川で冬ー春期の積算流量がこの期間の全流量の半分に達する日付を調べたが、その結果によると、北緯44度以北のアメリカ北部及びカナダの多くの川において融雪による冬ー春期の流量増加が20世紀前半に比べ早期に起きているとのことである。このような河川流量増加期の変化が水性生態系に与える影響についてはよくはわかっていないが、重要であるかもしれず、例えば、大西洋の鮭の生存率に影響を与えるかもしれないとのことである。
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R○深海魚の増加(2006年3月23日、アメリカSIO/UCSD)
カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所のBailey氏、Ruhl氏およびSmith氏は北東太平洋の深海で15年間にわたる観測の結果、深海魚が過去15年間で3倍に増えたことを発表した。これらの深海魚は漁業の対象ではないので、この観測結果は非人為的な自然のものを現すと考えられる。深海の環境の大きな変化は海洋表層でのエルニーニョ/ラニーニャや、より周期の長い10年周期の変動に支配されると考えられる。表層の生物はこのような変動の影響をすぐに受けるが、深海の魚の餌となる海底の無脊椎動物への影響は数ヶ月から数年遅れる。過去15年間の観測によると、まず、海底でのウニ、なまこやヒトデが増加し、その後これらを捕食する魚類が増加した。深海の環境はこのように餌がどれくらい得られるかによって魚の数が決定されるボトムアップの形で、食物連鎖の高位にある生物(魚等)が下位の生物(ウニ等)の数量を支配するようなトップダウンではないとのことである。深海での食物環境は浅所からの沈降物質に依存するので、深海の魚の餌は浅海の魚の餌より少なく、より予測が難しい。このような違いの魚のコミュニティーに対する影響はよくわかっておらず、将来数学的なモデルを用いて研究される予定である。
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R○人工衛星で海中の渦を探査(2006年3月20日、アメリカNASA/JPL)
JPL、デラウェア大学及び青島の中国海洋大学の科学者達は、アメリカやヨーロッパの人工衛星のデータを用いてスペインおよびポルトガル沖のメディーとよばれる1000m以上の深さに存在する渦を検出する方法を開発した。これは人工衛星搭載の海面高度計のデータから別の人工衛星搭載の散乱計より求めた海上風による”ノイズ”を取り除いた結果を用いて渦の特徴を検出するという方法であり、また赤外線の観測より熱的な特徴も分析している。デラウェア大学のYan教授によれば、メディーは塩分の高い水を地中海から大西洋に運ぶのに重要な役割を果たしており、メディーの軌跡、輸送及び推移に関する知識は、地中海の高塩分の海水と北大西洋の海水との混合や相互作用を理解するために重要とのことである。地中海の海水は、大西洋の海水に比べ高塩分なため(編注:塩分の高い水は重い)、大西洋に流出した段階で大陸棚に沿ってジブラルタル海峡で1000m以下に沈み、その後時計回りの渦を形成、2年以上存続し西進するが、これがメディーで、典型的なものは厚さが600m、直径は100kmで9億トンの塩を含んでいる。再びYan教授によれば、北極での氷の融解が大西洋に大量の淡水を与え、そのため冷たい海水の沈降が弱まり、それによって海水のコンベヤーベルトと呼ばれる(深層を含む地球の海洋全体の)大循環が止まる恐れがあり、このため地中海から大西洋への安定した塩を補給がなければ、低緯度域から極域への熱の輸送が弱まるかもしれず、それによりアメリカ北東部や北西ヨーロッパが低温化するかもしれないとのことである。現在の方法は100%正確ではないが、現在Yan教授達はこの方法を用いて三峡ダム建設前後の東シナ海の塩分の変化を調べている。
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D○インターネットで利用可能な魚の標本の3次元高解像度解剖図作成プロジェクト開始(2006年3月16日、アメリカSIO/UCSD)
アメリカカリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所は、同校Keck Center for Functional Magnetic Resonance Imagingと共同して、スクリップス海洋脊椎動物コレクションに含まれている魚の標本に、医療で使用されているMRI(Magnetic Resonance Imaging; 磁気共鳴画像)技術を適用して、オンラインで魚の3次元高解像度解剖図が閲覧できるようにする5カ年共同プロジェクトを始めることになった。このプロジェクトはデータの作成だけではなく、新しいハードウェアやソフトウェアの作成も含み、NSF(編注:アメリカで研究に対し助成金を支出する組織)はこのプロジェクトに対し約250万ドルの助成を行う。MRIによって作成されるデータは研究目的にも用いられるが、高校生や一般の人々も、今後作成される予定のデジタル解剖ツールによって、魚を実際に解剖することによって殺すことなく魚の内部構造等を学習することができるようになる。なお、スクリップス海洋脊椎動物コレクションは現在知られている魚の科の90%を含み200万個以上の標本を持っている。
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T○世界最大の2酸化炭素捕捉プラント、デンマークで竣工(2006年3月14日、ヨーロッパ/EU)
3月15日にデンマークのElsamで発電所から排出される2酸化炭素を捕捉する世界最大の試験プラントの竣工式が行われる。このプラントは2酸化炭素捕捉のための新技術のデモンストレーション及び実証試験のために建設され、捕捉された2酸化炭素は地下に貯蔵される。EUは京都議定書に署名しており、2酸化炭素排出の削減に努めているが、化石燃料は今後も約85%のエネルギーを当分の間供給し続ける見込みであり、太陽、風力、波力、バイオといった再生可能なエネルギーや原子力といった方法に転換することによって削減目標を達成することは困難である。したがって現時点では、2酸化炭素捕捉により2酸化炭素排出の削減を補助することができる。2酸化炭素捕捉及び貯蔵は、発電所や石油精製所といった大規模な施設で稼働させるのが最も有効である。
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T○デンマークWave Dragon社製外洋波動エネルギー発電試験設備受注(2006年3月14日、WaveDragon)
KP Renewable社はWelsh European Funding OfficeよりWave Power Station計画に対する500万ポンドの助成金付与の公式の通達を受け取った。Wave Power Station計画は最大77MWの波力発電をWales地方で行う計画で、2段階に分けられている。今回の助成金は最初の段階のWave Dragon社製の7MWの装置を西Wales沖に設置する為に用いられる。この装置で最大6000家庭の電力を十分まかなえると予想されている。
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R○南極の氷の減少(2006年3月2日、アメリカNASA/JPL)
コロラド大学ボールダー校のVelicogna及びWahr氏によれば、南極の氷床は2002年4月から2005年8月迄の期間に、年間152+/-80立方kmという無視できない量の質量を失っているとのことである。この氷の融解によって海面は観測期間中に全世界で1.2mm上昇可能で、この値はこの期間の海面上昇の13%に相当する。この研究は米独共同のGrace(Gravity Recovery and Climate Experiment)のデータを用い、以前は困難だった氷床全体の質量変化を観測して行われた。Velicogna氏によれば、海面水位の変動の不確定性の大きな部分は氷床の変動で、この研究はより正確な海面水位の変動予測への一歩になるとのことである。Graceはまったく同一の2個の人工衛星を用い、地球の重力場の微少な変化を観測できるが、これによって天候のパターン、気候変動や地震による氷、大気、水や固体地球の質量変動を調べることができる。
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