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当事業所では海洋・水産・気象関連のデータ処理・解析や数値計算を主に行っていますが、他分野の諸計算・統計解析業務についてもお受け致します。個人やNPO、NGOのお客様も歓迎致します。
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パワースペクトル密度計算 (スペクトル解析) 図を含む本文書の著作権はCygnus Research Internationalに帰属します。無断転載はお断り致します。 PD001A/B ユーザーガイド 5/7 目次 (4-2) テューキー窓関数のテーパー比;%で表したテーパー比 無指定時は10% (4-2-2) 窓関数の適用とは (4-2-3) ハニング窓関数;使用すると問題が生じる場合について 図4-16(a)は窓関数の適用でどのように図4-15(a)に示すデータのPSDが変わるかを示す図です。この図はやや見にくいので、平滑化巾3ビンのFDSを適用した結果を図4-16(b)に示します。これらの図によりバンドB内ではテューキー窓関数を適用したPSD(青線)や窓関数非適用のPSD(紫線)に比べハニング窓関数を適用したPSD(赤線)は明らかに小さくなっています。バンドAでも同様の傾向が見られます。ハニング窓関数を適用したPSDを窓関数非適用のPSDで割った値(赤線)及び、テューキー窓関数を適用したPSDを窓関数非適用のPSDで割った値(青線)を図4-16(c)に示しますが、この図でもバンドB及びバンドAでハニング窓関数を適用したPSDが他より小さくなっていることがわかります。 図4-17の左側の3図((a)、(c)及び(e))は図4-15(a)に示すデータを(2-1-3-5)で記述した方法によってバンド別に分離した結果で、右側の3図((b)、(d)及び(f))は左側に示す分離後のデータにそれぞれ個別にハニング窓関数を適用した結果です。ここで、本小額定型計算業務PD001シリーズを含めた通常のPSDの計算では式(3)が成立することを前提としていますので、式(3)中の複数の周波数成分をバンドとして纏めると ここで、データの変動の大きさの指標として前述したように変動の”エネルギー”を表す分散を用います。図4-17の左側の各図に記入している分散は元のデータをバンド別に分離した後に個別に計算した分散です。これに対し、図4-17の右側の各図に記入している補正後の分散というのはバンド別に分離した個別のデータにハニング窓関数を適用した後に計算した分散に(4-2-8)に記述する補正を適用したものです。なお、この補正は窓関数を適用したPSDに対し加える補正と同じもので、個々のデータに掛けられる窓関数の値が1.0以下なのでそれによる減衰を補正するために行います。図4-17の右側の各図に記入している分散比というのは右側の図の補正後の分散を左側の図の分散で割った値で、これによりハニング窓関数により実質どの程度各バンドのデータの変動が減衰したかがわかります。 バンドBの変動は図4-17(c)が示すように主にデータの両端近くにあるのですが、これらの変動は図4-17(d)が示すようにハニング窓関数によって大きく減衰させられ、このバンドの分散比は僅か38.9%です。このためハニング窓関数を適用したPSDのバンドB内の値は窓関数非適用のPSDの値よりかなり小さくなっています。バンドAにも似たような傾向が見られます。これに対しバンドCの変動は図4-17(e)が示すようにデータのどの部分にも概ね一様な大きさで存在し、そのため図4-17(f)中の分散比が示すようにハニング窓関数による減衰は実質ほとんどありません。したがってこのバンドではハニング窓関数を適用したPSDと窓関数非適用のPSDは、細かい違いはありますが、概ね同じような大きさの値になっています。 なお、これはこの節の記述にとって大事なことではないのですが、図4-18に示すようにバンドAとバンドBを足し合わせたもの(黒線)は元のデータ(紫線)の大雑把なプロフィールを再現しますので、少なくともこのデータに関してはバンドAとバンドBに含まれる変動は重要です。 (4-2-4) 本小額定型計算業務 PD001Aでハニング窓関数を適用したPSDのみではなく、窓関数非適用及びテューキー窓関数を適用したPSDも計算する理由 (4-2-5) ハニング窓関数によるデータ両端近くの減衰を少なくする方法 この方法を適用するためには最初に図4-19(a)に示すように元のデータセットを中央で分割します。これにより元のデータセットの半分の長さのデータセットが2個(データ1及びデータ3)できます。つぎに、図4-19(b)に示すように元のデータセットの最初の1/4の部分と最後の1/4の部分を削除しますと元のデータセットの半分の長さのデータセット(データ2)がさらにもう1個できます。 次に、これらの3個のデータセットに対し図4-20に示すように個別にハニング窓関数を適用した後にそれぞれのPSDを計算します。ここまでの操作により計3セットのPSDが計算されますが、これらの3個のデータセットのデータ長(数)は同じですので、計算された3セットのPSDのビンの数及び各ビンの周波数もすべて同じになります。最後にそれぞれのビンについて3セットのPSDの平均を計算します。 図4-21(a)に各データセットに掛けられるハニング窓関数の値、すなわち重みを、元のデータセットにおいてそれぞれのデータセットがどの部分(図の水平位置)にあたるかがわかるような形で示します。この図では各データセットの一部が重ね合わされていますが、ここでのポイントは一部のデータが複数回使われるのを許容することによりデータ両端近くの減衰を少なくできることです。図4-21(b)の青線は図4-21(a)の各線で表される重みを各データについて足し合わせた結果で、赤線は通常のハニング窓関数による重みを示します。この図の青線により、データセットの重ね合わせの結果全体の1/2のデータに掛けられる重みは実質1.0になることがわかります。なおこのケースでは全体の1/2のデータは2度使われることになります。 図4-22の青線はこの方法で計算したPSDを、赤線は通常のハニング窓関数を適用して計算したPSDを、紫線は窓関数を適用せずに計算したPSDを示します。この図の赤線及び紫線は図4-16(a)及び(b)で示した赤線及び紫線と同じPSDですが、ウェルチの方法(青線)を用いると平滑化が行われるため、それとあわせるために平滑化巾5ビンのFDSを適用しています。この図よりウェルチの方法を用いるとバンドA及びBにおいてもPSDはあまり減衰せず、窓関数非適用の結果と概ね同程度の値になることがわかります。 ウェルチの方法を用いるとここで記述したように便利な場合があるのですが、元のデータより短いデータセットを作成して計算するため、各ビンの周波数間隔が広くなるので周波数解像度が悪くなります。これは同時に周波数ゼロを除く最も低い周波数のビンの周波数が高くなることを意味しますので、低周波数の変動が重要である場合は注意が必要となります。 (4-2-6) 窓関数が持つFDSに似た効果について ここでは、まずPSDがどのように算出されるのかという点から始めます。窓関数を適用しない場合の片側PSDは下の式のように算出されます。なお、下式の右辺の分子側にある数値2は片側PSDを採用したために必要になる係数です。
まず、式(18)と同様に窓関数のn番目のビンのフーリエ変換を下のように表します。 ここで、仮に信号のあるビンがk番目とすると、式(23)よりk-1番目のビンのPSDにもk+1番目のビンのPSDにもk番目のビンの値が影響しますが、それより離れたビンのPSDにはk番目のビンのPSDは何ら影響を与えません。図2-6、図4-6(a)や図4-10(c)でハニング窓関数を適用した場合は周波数一致が成立(データ長A)していても信号のピークが3ビンの巾に広がるのはこのためです。この信号の巾の拡大は原理的にはスペクトル漏れと同じなのですが(補足2)、通常はスペクトル漏れとは呼びません。なお、ハニング窓関数以外の窓関数を使用した場合はWr(n)もWi(n)も多くのnで0ではなくなるので、式(22)や式(23)のような簡単な式は得られません。図2-8(a)でテューキー窓関数を適用した結果(青線)のみ全周波数域で比較的大きな値をもつのはこのためです。 (4-2-7) IFDSは必ずしもPSDを平滑化しない (4-2-8) 窓関数適用によるPSDや振幅スペクトル減衰に対する補正 (4-2-9) 窓関数適用時の補正の効果 次にPSDですが、図4-24(a)は単一の周波数の信号のみを含むデータから計算した信号ビンのPSDがデータが増えるにつれどのように変化するかを示します。ここで使用したデータは図2-4で使用したものと同じで、この計算では(4-1-3)で記述したような問題を避けるためトレンド除去は行っていません。なお、窓関数を適用した場合(青線及び赤線)は上で記述した補正を行っています。この図よりデータが増えるにつれ信号ビンのPSDが増加しているのがわかりますが、これは図2-4(f)に示すようにデータが増えるにつれビンの周波数巾が狭くなるためです。図中の縦の黒の破線は周波数一致が成立しているデータ長を示します。 この図ではやや分かりにくいので、信号ビンのPSDにビンの周波数巾を掛けたもの、すなわち信号ビンの分散を図4-24(b)に示します。なお、図中の黒線はデータの分散です。ここで、上述の補正がPSDに対してどの程度うまくできているのかを判断する指標としては2つのものが考えられます。式(1)で示したように各ビンのPSDにビンの周波数巾を掛けたもの、すなわち各ビンの分散の総和はデータの分散になるのですが、窓関数を適用した場合はデータの変動が元のものより小さくなるために式(1)の左辺のデータは窓関数を適用する前の実際のデータのままで、右辺のPSDは窓関数適用後ですが未補正のPSDの値を使用すると等式が成立しなくなります。したがって、右辺側のPSDに適用する補正によって式(1)の左辺がどの程度窓関数を適用する前の実際のデータの分散に近づくのかという事が指標の1つになります。 PSDの補正がどの程度うまくできているのかを判断するもう1つの指標としては、振幅スペクトルの場合と同様に補正後の値がどの程度実際の信号の値に近いのかという事です。ここで示している例では信号は単一の周波数の三角関数のみですので、2番目の指標を用いると図4-24(b)中のデータの分散(黒線)と信号ビンの分散(黒以外の線)が一致することが望ましいと言えます。この図では窓関数非適用(紫線)及びテューキー窓関数を適用(青線)した場合は周波数一致が成立するデータ長でデータの分散と信号ビンの分散がほぼ一致していますが、ハニング窓関数を適用した場合は信号ビンの分散がかなり小さくなっています。したがって、これではハニング窓関数を適用した場合の補正は指標2を用いて判断すると補正に問題があるという結論になってしまいます。 しかし、このようにハニング窓関数を適用した場合に信号ビンの分散が小さくなるのは上で記述した補正に問題があるのではなく、式(23)で表されるようにハニング窓関数を適用すると、たとえ周波数一致が成立していても信号によるピークは信号ビンを中心とした3ビンの巾を持つものになるからです。ここで重要なのは窓関数とは無関係に式(1)が成立することが望ましい(ただし、左辺のデータは窓関数を適用する前の実際のデータのままで右辺のPSDは窓関数を適用した場合は補正後の値)という点です。窓関数非適用(紫線)及びテューキー窓関数を適用(青線)した場合は周波数一致が成立しているデータ長では信号ビン以外のビンのPSDは信号ビンのPSDに比べ相当小さい(窓関数非適用の場合は実質ゼロ)ので、データの分散は概ね信号ビンの分散に一致します。これに対し、ハニング窓関数を適用した場合は周波数一致が成立していても信号ビンの両隣のビンのPSDの値は信号ビンのPSDの1/4という大きな値となり、したがって信号ビンの両隣のビンを無視して信号ビンの分散のみを取り上げるとデータの分散より小さな値になっても当然ということになります。 図4-24(c)は各ビンの分散の総和を示します。なお、式(1)よりデータの分散は窓関数を適用しない場合の各ビンの分散の総和(紫線)と一致しますので、図では省略しています。また、この図の縦軸の表示範囲は図4-24(b)と比べてかなり狭くしていますので、ご注意ください。図4-24(c)より各ビンの分散の総和はハニング窓関数を適用した場合でも他と比べ特別に小さいわけではないことが分かります。図4-24(d)は信号ビン及びその両隣のビン、計3ビンの分散の和を示します。この図よりハニング窓関数を適用した場合の結果(赤線)は他の結果よりデータの分散(黒線)に近いことがわかります。特に周波数一致が成立しているデータ長(縦の黒の破線)ではハニング窓関数を適用した場合の結果もデータの分散もほぼ0.5(この場合の理論値)になっています。 これらの結果より窓関数を適用した場合のPSDに対する上述の補正は指標1を用いて判断する限り概ね良好で、指標1と指標2は矛盾する指標といえます。ただし、窓関数を適用した場合でも補正によって、左辺のデータは窓関数を適用する前の実際のデータのままで右辺のPSDは窓関数を適用した場合は補正後の値とした式(1)が完全に成立するならば、図4-24(c)ではすべての線がデータの分散(青線の窓関数非適用の結果と同じ)に一致しなければなりませんが、実際にはそうなっていません。また、図4-20で示したように周波数によって補正の効果がかなり変わってくる場合もあります。そういった点ではこの補正には限界があります。 (4-2-10) テューキー窓関数のテーパー比がPSDに与える影響 まず、テーパー比が何であるのかという点ですが、図4-25は例としてテーパー比が50%のテューキー窓関数の値を示します。この窓関数をデータに適用すると、データの初めの25%及び終わりの25%の部分がこの図に示すような割合で減衰させられますが、中央部の50%は元の値のままになります。前述したようにテーパー比が0%ですと、データのどの部分も変わらないので窓関数非適用と同じになりますし、テーパー比が100%の場合はハニング窓関数と同じになります。
図4-26(b)はこの場合の振幅スペクトルの信号ビン周辺のみを拡大した図で、この部分はメインローブと呼ばれます。この図ではメインローブ部の”山”の形状を示すために信号ビンの両隣のビンの値の間に色のついた破線を描画しています。この図よりテーパー比を大きくするにつれ色のついた破線の高さが高くなるので、信号ビンに隣接するビンの値が大きくなることがわかります。また、同時にこの”山”の中腹〜頂上部の巾が広くなります。この”山”の底辺部の巾についてはやや複雑です。このように周波数一致が成立する場合は、図4-26(a)で示すようにテーパー比を大きくしたほうが全般的にはサイドローブの値が小さくなるので信号がシャープになるのですが、図4-26(b)のようにメインローブのみを見るとテーパー比を小さくした方が局地的にはシャープになります。 図4-26(c)は実際の信号の周波数が信号ビンの周波数から最も離れるようなデータ長の場合(図2-4のデータ長Cに相当)であること以外は図4-26(a)と同じ図です。この場合は強いスペクトル漏れが生じますので、その結果として窓関数非適用のPSD(緑線)は全周波数域で大きな値になります。テーパー比が10(青線)、50(赤線)及び90%(紫線)のテューキー窓関数を適用した場合のサイドローブ部のPSDの値の大雑把な大きさは図4-26(a)と大差はありませんが、サイドローブの形状は変わっています。ハニング窓関数(黒線)を適用した場合は丘上のサイドローブは現れませんが、信号ビン以外のビンのPSDはテーパー比90%のテューキー窓関数を適用した結果と近い値になっています。図4-26(d)はこの場合の振幅スペクトルの信号ビン周辺のみを拡大した図で、データ長が異なる以外は図4-26(b)と同じ図です。この図よりテーパー比が大きくなるにつれ信号ビンの振幅が実際の信号の振幅(1.0)に近づくことがわかります。ただし、同時に信号ビンの隣のビンの振幅も大きくなり、 メインローブ部の”山”の頂上がより平坦になります。 以上より、テーパー比を小さくすると周波数解像度が増してメインローブ部がよりシャープになり、テーパー比を大きくすると計算されたPSDの値がより実際の信号のPSDに近づきます。 図4-27(a)は図4-15(a)に示した実際のデータに対し、テーパー比10%のテューキー窓関数(青線)、テーパー比50%のテューキー窓関数(赤線)、テーパー比90%のテューキー窓関数(紫線)、ハニング窓関数(黒線)を適用した場合のPSD及び窓関数を適用しなかった場合のPSD(緑線)を示します。図中のバンドは図4-16に示すものと同じです。この図はそれぞれの結果の比較を行うためには複雑すぎるので、平滑化巾3ビンのFDSを適用した結果を図4-27(b)に示します。この図よりそれぞれの結果の差がもっともはっきりと現れるのはバンドBですが、これはテューキー窓関数のテーパー比を大きくするにつれ(4-2-3)に記述したような問題が次第に顕在化してくるからです。その点を除外すると全般的にはテーパー比を変えた事によるPSDの違いはあまり大きくないと言えるようです。また、このように色々な周波数の信号やノイズが混在するデータでは図4-26のように窓関数のサイドローブがPSD上に現れることはあまりありません。 図4-28(a)は計算された信号ビンの振幅がデータ長が増えるにつれどのように変化するかを示した図2-4(b)の一部を取り出した図で、図中のVHは周波数一致が成立している場合の値を、VLは信号ビンの値が最も小さくなる値を示します。図4-28(b)はこのVHとVLがテーパー比を変えるとどのように変わるかを示します。実際のデータを取り扱う場合は周波数一致を成立させるのは困難ですので両者の差が小さいほうが好ましいのですが、この図よりテーパー比を大きくしたほうが差が小さくなることがわかります。 最後に10%から90%まで10%刻みでテーパー比を変えるとPSD及び振幅スペクトルがどのように変わっていくかを図4-29に示します。この図の一番上の段((a)、(b)及び(c))はそれぞれのテーパー比のテューキー窓関数の値(データにかける重みに相当)を、2番目の段((d)、(e)及び(f))は図4-26(a)と同様に単一の周波数の三角関数のみを含むデータで周波数一致が成立している場合のPSDを、3番目の段((g)、(h)及び(i))は図4-26(b)と同様に単一の周波数の三角関数のみを含むデータで周波数一致が成立している場合のメインローブ周辺の振幅スペクトルを、4番目の段((j)、(k)及び(l))は図4-26(d)と同様に単一の周波数の三角関数のみを含むデータで周波数一致が成立していない場合のメインローブ周辺の振幅スペクトルを、最下段((m)、(n)及び(o))は図4-27(b)と同様に実際のデータを使用し平滑化巾3ビンのFDSを適用したPSDを示します。なお、図は3段階の異なるテーパー比の結果を1グループとして列別に分け、それぞれの列のテーパー比は最上段の図中に記入しています。 |
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