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当事業所では海洋・水産・気象関連のデータ処理・解析や数値計算を主に行っていますが、他分野の諸計算・統計解析業務についてもお受け致します。個人やNPO、NGOのお客様も歓迎致します。
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パワースペクトル密度計算 (スペクトル解析) 図を含む本文書の著作権はCygnus Research Internationalに帰属します。無断転載はお断り致します。 PD001A/B ユーザーガイド 7/7 目次 (4)スペクトル漏れを除去する他の計算方法(本方法をPD001A/Bに含める予定はありません) まず最初にSRのような種々雑多な信号やノイズを含むデータのPSDはPD001A/Bを用いてもMEMを用いても基本的にはどちらもPSDという同じものを求めようとしていますので、概ね同じような結果になる事を示します。図A2-9(a)及び(b)にPD001A/B(青線及び赤線)及びMEM(紫線)で計算したSRのPSDを示します。なお、図中の青線及び赤線は見やすくするために上方へ移動させています。この計算で使用したSRのデータ長は8514個で、このデータ長はS1を付加しPD001A/BでPSDを計算した場合にはS1のスペクトル漏れが最大に近くなるデータ長で、図A2-3の窓関数巾Bまたは図2-4(b)のデータ長Cに相当します。なお、S1を付加した場合にトレンドを除去すると(4-1-3)で記述したような問題が生じるため、ここで示した計算ではトレンド除去は行っていません。この図中のS2及びS3というのは図4-9の説明で記述したようにSRの開始から終了まで比較的安定して存在している潮汐成分によるピークで、ここでも目印として使用します。 ここで、図A2-9(a)の青線は窓関数を適用しなかった場合の結果で(矩形窓関数適用と同等)、水平軸に均等(線形)スケールを採用していることと線の位置を上方にずらしている以外は図4-13(a)の黒線と同じです。また、この図の赤線はハニング窓関数を適用した場合の結果で、水平軸のスケールや縦位置の違い以外は図4-13(c)の黒線と同じです。図A2-9(a)の青線や赤線と図A2-9(b)の青線や赤線との違いは、図A2-9(a)はFDS(周波数領域平滑化)を行わなかった場合の結果を示し、図A2-9(b)はFDSを適用した場合の結果を示している点です。(4-3)節で記述したようにFDSにはPSDを平滑化する効果があり、そのために図A2-9(b)には図A2-9(a)にあるような細かい変動がなく、全体の大雑把な様子が把握しやすくなっています。 MEMを用いてPSDを計算する際には自己回帰モデルの次数というものを決めなければいけませんが、この自己回帰モデルの次数はPSDの実質上の周波数分解能に影響を与えます。図A2-9(b)に示したPD001A/Bの結果(青線及び赤線)はFDSによって実質上の周波数分解能を図A2-9(a)に示した結果より下げていますので、MEMの方(紫線)もそれに応じて図A2-9(b)の自己回帰モデルの次数を図A2-9(a)のものより少ない値にしています。なお、MEMを使用する場合は任意の周波数でPSDを計算できますが、この節ではMEMの結果とPD001A/Bの結果を比較しますので、図A2-9ではPSDを計算する周波数はPD001A/BによるPSDの周波数と同じにしています。 図A2-9よりPD001A/Bを用いてもMEMを用いてもSRのような種々雑多な信号やノイズを含むデータよりPSDを計算すると全体の大雑把な様子は同じようなものになることがわかりますが、両者の結果の違いはこのような全体の大雑把な部分ではなく細部に顕われます。具体的にはS3についてMEMで計算した結果をよく見るとS3には複数のピークがあるように見えますが、S3は半日(12時間)周期の潮汐成分で、半日周期の潮汐というものには周期が少しずつ異なる複数のものがありますので、MEMの結果のほうがより精確なPSDを示している可能性があります。その他、詳細なスペクトル解析を行う場合はPD001A/BによるPSDとMEMによるPSDの違いは重要になることもありますが、本節はS1のスペクトル漏れの違いを示すことを目的としていますので、SRのPSDについてはどちらの方法を用いても概ね同じになるという点に留めます。 図A2-10の青線はSRにS1を付加して計算したPSD、黒線はSRのみの場合のPSDで、比較のために黒線は下方向にずらしています。図A2-10(a)及び図A2-10(b)はともにPD001A/Bで計算した結果ですが、図A2-10(a)は窓関数を適用しなかった場合でこの図の青線は図4-13(a)の青線と水平軸のスケール以外は同じで、図A2-10(b)はハニング窓関数を適用した場合の結果でこの図の青線は図4-13(c)の青線と水平軸のスケール以外は同じです。なお、両図の黒線は線の位置を上にずらしている以外はそれぞれ図A2-9(a)の青線及び赤線と同じです。図A2-10(c)はMEMで計算した結果で黒線は図A2-9(a)の紫線と同じです。なお、これらのPSDを計算する際にはトレンド除去は行っていません。 窓関数を適用せず(矩形窓関数適用と同等)にPD001A/BでPSDを計算すると図A2-10(a)よりS1のスペクトル漏れでSRのPSDはまったくわからなくなることがわかります。ハニング窓関数を適用すると図A2-10(b)よりS1のスペクトル漏れの影響はかなり抑えられ、比較的広範囲の周波数域でSRのPSDが確認できるようになることがわかります。これらに対しMEMは窓関数の畳み込みが行なわれませんので、図A2-10(c)よりスペクトル漏れが起きていないことがわかります。 ここでSRではなくS1に注目すると、図A2-10(a)や図A2-10(b)のS1のPSDの値はS1の実際のPSDの値にかなり近いものになっています。これに対し図A2-10(c)のPSDの値はS2やS3等SRのPSDは図A2-10(a)や図A2-10(b)の値とあまり変わらないにも関わらず、S1の値は他と比べ5億分の1程度(図の縦軸は対数スケールです)と、かなり小さくなっています。これは主にS1は振幅、位相や周波数が一定の三角関数でその理論的なスペクトルはS1の周波数のみ値がゼロでない線状のスペクトルですが、この図の作成のために計算した周波数の中にはS1の周波数に近いものはあっても一致する周波数はなかったためです。この点をもう少し明らかにするために自己回帰モデルの次数はそのままにし、PSDを計算する周波数間隔のみを小さくし、計算する周波数にS1の周波数を含めるようにして再計算した結果を図A2-11に示します。なお、図A2-11で表示している周波数範囲は785から815迄です。 この図での青や黒のx印は再計算結果で、計算した周波数を明確にするためにこの図では各x印を直線で繋ぐことは行っていません。この図の縦の赤線は図A2-10でPSDを計算した周波数を示し、中央にある縦の黒線はS1の周波数を示します。このS1の周波数でのPSDは青の円で囲んだx印で、この値はS1の実際のPSDの値にかなり近いものになっています。理論的にはS1のPSDはS1の周波数以外ではゼロになるのですが、スペクトル漏れがないMEMでもこの図に示すようにS1は多少の周波数巾をもった”山”のような形になります。したがってS1のような強力な信号を見落とす可能性は低いのですが、この図よりMEMを使用してS1のような振幅、位相や周波数が一定の三角関数で表されるような信号のPSDの値を精確に知りたい場合はPSDを計算する周波数について注意を払う必要があることがわかります。もしS1の振幅がS2やS3と同程度の場合はS1を見落としてしまう可能性もあります。なお、信号の周波数は一定でも振幅が多少とも変動するような場合は(2-1-3-3)の(ケース3)で示したように信号の理論的なPSDのピークそのものが単一の周波数での線状のものではなくある程度周波数巾をもった”山”のようなものになります。 図A2-11の青や黒のx印で見られるような”丘”や”谷”の水平スケールは図中の縦の赤線の間隔と概ね同じで、図A2-11の青や黒のx印の水平間隔にくらべかなり大きくなっています。これはMEMの実質的な周波数分解能は自己回帰モデルの次数で決まり、その上限はデータのサンプリング間隔及びデータ数で決まってしまうためで、この図のように細かい周波数間隔でPSDを計算しても、ピークの周波数をより精確に知るためには役にたちますが、計算されたPSDの周波数分解能が向上するわけではありません。その他、MEMではこの補足で示したようなスペクトル漏れはおきませんが、図の赤の楕円で示した部分のようにS1の”山”から少し離れたところでもS1の影響が顕われています。 なお、MEMはPD001A/Bのようにデータは三角関数の和で表される(式(3))という仮定を用いませんので、データがS1のような振幅や周波数が一定の三角関数のみを含むような場合は想定外の結果を生じることがあります。当事業所は精確なスペクトル解析を行う必要がある場合は複数の手法でPSDを計算して相互比較することをお薦めしています。 補足3 データ長が短いと単一のピークが現れ、長いとツインピークが現れる理由 データ長がS1の周期に比べ短い場合は、S1の周波数f1に比べフーリエ変換の結果のビンの周波数巾が大きいためf1は周波数ゼロの最初のビンに含まれることになり、結果としてS1のフーリエ変換結果のピークは周波数ゼロの最初のビンに生じることになります。このような場合はS0のピークは畳み込みを行ってもそのままは元の周波数f0に残り、PSDや振幅スペクトルには周波数f0に単一のピークが現れます。この段階ではデータは緩やかに振幅が変わるS0と見なすことができます。ただし、この段階のデータ長はS1の周期を基準にすると短いのですが、図2-11に示すようにSLやSHの周期に比べればかなり長いと言えます。 データ長を長くしていくと、フーリエ変換の結果のビンの周波数巾が次第に小さくなり、ある段階でf1は2番目のビンの周波数域に含まれるようになり、結果としてS1のフーリエ変換結果のピークは2番目のビンに移ります。この段階で畳み込みを行うと元々f0にあったS0のピークはf0より1つ前と1つ後の2つのビンに分かれ、ツインピークが現れるようになります。本文書は教育目的ではありませんので、数学的な説明はこれで終了しますが、畳み込みについては(4-2-6)にも記述しています。 補足4 S1のトレンド除去により付加される直線成分のPSDの悪影響に対するS1とSRの周波数の関係 ここで、図4-10の例ではkは8になりますので、これを上式に代入すると、SRのPSDとS1のトレンド除去により付加された直線成分によるPSDが同じ値になるA/Gの値は0.076/mとなります。これはS1の振幅を1.0としてmを1番目のビンとするとSRの振幅が0.076、mを100番目のビンとするとSRの振幅が0.00076であればSRのPSDとS1のトレンド除去により付加された直線成分によるPSDが同じ値になるということです。mが100番目のビンの場合はまだ良いかもしれませんが、mが1番目のビンだとSRが少々大きくてもS1に付加された直線成分の影響でSRのPSDが見にくくなってしまいます。なお、図4-10で使用したデータの場合はmが20万番目程度であればSRのPSDとS1のトレンド除去により付加された直線成分によるPSDが同程度の値になりますが、実際のmの最大は4000ですので図4-10(d)ではSRはまったく視認できません。 |
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